ミノとハラミ

もろもろ忘れがちなオタクがのちのち己を振り返るために悪あがきでつけている備忘録

Kis-My-Ft2の2016年のリリースを振り返る

16th single『Gravity』(2016.3.16)

Gravity

Gravity

MARSの主題歌だということをたまに忘れる。いや……ドラマはフレンズの印象が強くて……。
MV監督は、当時ちょうど真田丸のオープニングタイトルが話題になっていたVFXの名手・新宮良平さん*1。振付はs**t kingz。MVも振付も、タイトルの「Gravity」=「重力」を可視化するというコンセプトがしっかりしていてよかった。
こういうスタイリッシュなダンス曲は『Kiss魂』以来、とメンバーも口々に話していた通り*2、Kiss魂の系譜に連なる曲ではあるんだけど、ウォータリングキスミントの呪縛から解き放たれたことにより*3、まともにかっこよくなってしまった。ダサかっこいいトンチキ成分はタイアップ先に吸収された節がある。
年度末リリースのシングルは、歌番組で見る機会が多い。披露するたび尺が違ったけど、Aメロを歌う場合は一貫して2番を採用してましたね。1番にあって2番にはないメロディーライン(帆をあげて~のところ)がかっこいいのと、わたしは北山担なので*4、ちょっぴり残念ではあった。でも藤ヶ谷くんのタイアップだから、彼が目立つに越したことないと思う。前年のAAOと最君で玉森くんが目立たないのもったいなかったもん。
藤ヶ谷くんといえば冒頭のリフトが、この腐敗した世界に堕とされたゴッドチャイルド*5感あって大好きです。こういうのが似合うのはこの人しかいない。

5th album『I SCREAM』(2016.6.22)

I SCREAM(2CD)(通常盤)

I SCREAM(2CD)(通常盤)

ひとつひとつの楽曲の振り幅と、アルバム全体を通じた「夏の一日」というコンセプトを両立しているのがすごい。トラックはもちろん、ボーカルにもメンバーそれぞれの成長と挑戦を感じる。従来の歌割からの脱却しかり、ラップやファルセットの多用といった技術面しかり。
決して一足飛びでこうなったわけではない。これまでの延長線上に、このアルバムがある。一例を挙げれば『Flamingo』の歌割、二階堂くんのラップと千賀くんのフェイクは昨年の二人のユニット曲『Double Up』の賜物だと感じたし、その昨年のユニット4組は、一昨年の北山&藤ヶ谷の『FIRE!!!』の成功がなければおそらく生まれなかった。そうやってひとつずつ階段を上ってきたのだ。ソロもユニットも、全てはグループ本体の活動へと還元されていく。しばしばメンバーの語るその構図が、口先だけでなく作品として示されているのが頼もしい。
その『Flamingo』には、NEWSの『Greedier』のような、あるいはキスマイの曲でいうと『Tell me why』みたいな、やや背伸びした印象を抱いていたので、ライブではそれらの曲と同じように大人っぽくスタンドマイク芸かな~と想像していたら、その亜種というか進化形というか。鳥籠サイコーでしたありがとうございました!!!! エッチだった……。アルバムにおいてもライブにおいても、この曲は傑出した出来だったと思う。新しかった。2015年までのキスマイにはおそらく出せなかった色だ。
リード曲である『YES! I SCREAM』は、何かというと世界を敵に回してばかりいたwキスマイが、正攻法でこの世界のチャンピオンを掴もうとしていることを高らかに宣言したアンセムではないだろうか。ポップでメジャーっていうのは、実はカウンターよりも茨道なのかもしれないけど、彼らはきっと逃げない。このパレードについていけば、新たな地平で見たことのない景色が見られるに違いない、との思いを新たにした曲でした。
『I Scream Night』については、キスマイ楽曲大賞に寄せたこのコメントにだいたいの思いは込めた*6
少クラとCDTVでも披露してくれたけど、テレビでは熱気が伝わりにくい曲。ライブの演出ありきという意味ではない。たとえキスマイジェットがなくてもアンコールじゃなくても、楽曲そのものに祝祭の興奮、真夏の残滓、きらめきやせつなさやノスタルジーはしっかり詰まっている。ただ、最も盛り上がる箇所がインストで横一列という、ボーカルやダンスフォーメーションに頼らない作りなので、テレビ映えはあんまりしないなあ。
このアルバムの構成の妙は、前述の通り1枚で「夏の一日」を表現しているところと、もうひとつは、『Re:』でしっとり終わらない、『I Scream Night』でやだやだ終わりたくない〜って駄々こねた挙句に『WANTED』*7でもうひと騒ぎするところ。『Re:』にしても、「メンバー全員の共同作詞で、主に自身のアイデアが反映された箇所を、ペアで歌う」「ファンへのメッセージであると同時に、メンバーへのメッセージでもある」という仕立てだから、アルバムやライブの終盤のメッセージ系バラードに退屈しがちな客層も、比較的コミットしやすかったんじゃないかと思う。
3rdアルバムの時にソロ曲やユニット曲は別CDにしてくれって言ったんですが、ようやく叶いました。ありがとうエイベックス。ツアーが始まるまではソロ7曲もあってセットリストどうすんだよって思ってたし、始まってからも7人曲が少ないのはちょっと物足りなかったけど、危惧していたような間延びした感じはなくうまいこと組まれていて、7人7様の見せ方と観客の巻き込み方があって、よく考えたらこいつら結構すごいことやってるな……!?と驚いたよ。てんでばらばらの個性が集ってこそ、キスマイのキスマイらしさは生まれる。
ソロを聴くなら4cups盤ですが、デビュー前から知ってるけど最近キスマイどんなんやってんの?というジャニオタには通常盤をおすすめします。ボーナストラック込みでよくまとまってて、2枚目には過去曲のメドレーもついてるので。公式サイトで試聴もできるよ!


17th single『Sha la la☆Summer Time』(2016.8.24)

Sha la la☆Summer Time(通常盤)

Sha la la☆Summer Time(通常盤)

待望のローラーを履くシングル。待った……マジで待った……。『運命Girl』から3年半待った……。曲調もさわやかアイドルソングで、なんというか原点回帰を感じた。
原点回帰といえば、CDを買うことの意義をいま一度考えさせられたという点もそうね。レーベルとショップとファンの共同作業みたいなところもあった。avexのスタッフブログにしろ、ジャニーズwebのメンバー連載にしろ、CDの購入をああも直截な表現で感謝されたのは、デビュー曲を除けばひょっとすると初めてだったんじゃないだろうか。
円形の狭いセンターステージの上でくるくると回る7人に、白い羽根と銀テープが降り注ぐ光景は、まるで夢のように美しかった。ライブDVD、初導入のウィングカムが超いい仕事してる。
そしてユニット曲が初めて(アルバム曲ではなく)シングルのカップリングとしてリリースされた。次のツアーかどっかで披露してくれるのかなあ、スナックSHOW和なんかどう考えても寸劇込みで見たいやつだろw シャッフルユニットはキスマイの武器のひとつとして今後も展開していくのかな、という気配を感じる。



個々の大きな仕事は落ち着いていたし、シングルも少なかったけど、楽曲には恵まれた2016年だったように思う。わたしは強いて言うなら1stアルバム出の新規なので、「CDを発売して音楽番組やライブで歌って踊るアーティストとしてのキスマイ」を何よりも信頼しています。2017年、まずはトリプルA面シングル楽しみっすね(`・ω・´)

*1:以降、YES! I SCREAMとシャララ~のMVも新宮さんが担当。キスマイのMVはデビュー以来Brand New Worldまでずっと同じ監督さんだったけど、AAOから替わっている

*2:Kiss魂の振付もシットキングスだもんね

*3:2015年までは毎年この時期にCMタイアップがあった

*4:1Aが北山ソロ、2Aが藤ヶ谷ソロ

*5:鬼束ちひろ『月光』

*6:他にKiss魂とThank youじゃん!のコメントもツイッターで紹介してもらってました。あざっす!

*7:通常盤のみ収録のボーナストラック

続・国民的アイドルのファンであるということについて

harami.hatenablog.com
これの続きのようなもの。前回もスマスマを見た直後に書いたな、そういえば。

前掲の記事の頃は、連日どこへ行っても誰かしらがSMAPベッキーの話をしていた。誰もが彼らに興味津々で、同時にちっとも興味がなかった。こぞって話題にする程度には興味があり、しかし聞きかじったあいまいな情報だけを根拠として気軽に貶せる程度には興味がない、という意味だ。誰もが知っている、とても人気のある芸能人のはずなのに、そんな「SMAPのファン」や「ベッキーのファン」が半径数十メートル以内に存在していることを、噂話に花を咲かせる人々は全く想定していなかった。当然、本人たちが今この瞬間も同じ世界で生きている事実も、蚊帳の外だった。「誰もが知っている」ということは、逆に「誰も知らない」ということなのかもしれない。誰にとっても「わたしのこと」ではないのだ。「みんなの人気者になる」ってこういうことなのか。「みんな」っていったい誰なんだろう。そんなことばかりを考える年明けだった。

そうして始まった2016年がもうすぐ終わる。つい先日、ある若い男性と世間話をしていて、わたしが前日に関ジャニ∞のコンサートを観てきたという話になった。彼はこう言った。「関ジャニはジャニーズっぽくないから好感が持てる」「いかにもジャニーズっぽいのって大倉くんと錦戸くんくらいじゃないですか?」。どう返していいかわからなかった。わたしはジャニーズ事務所のアイドルである関ジャニ∞が好きだし、そもそも本命は別の(おそらく彼に言わせれば関ジャニ∞よりも「ジャニーズっぽい」)アイドルグループだ。ジャニーズっぽくないから好きと言われても困る。そもそも、ジャニーズっぽさって何?
ただひとつわかったのは、ジャニオタってずっとこういう世間の声を浴び続けてきたんだろうな、ということだった。わたしのファン歴はたかだか4~5年で、だいぶいい大人になってから好きになったので、この手の経験がほとんどない。だけど今後、担当のグループが関ジャニ∞のように、SMAPのように、認知を広げていったら? このままわたしがファンを辞めずにいたら? わたしは、そして彼らは、生涯この声と戦い続けなければならないの? 戦っていることすら知られずに?

今、わたしはアイドルのファンをやっていくことが少し怖い。

国民的アイドルのファンであるということについて - ミノとハラミ

あれから11ヶ月、恐怖は増幅されるばかりだ。
芸能人やアーティストやアスリートを単に「好きである」ことと、彼らの「ファンである」自覚を持つこと、具体的な「ファン活動をする」ことは同じではない。でも、自認や活動の端緒が「好き」という自然な感情である以上、今日から辞めますと言って辞められるものでもない、少なくともわたしにとっては。恐怖よりも愛情が勝つあいだは、勝手にこっそり戦いながら、ファンを続けていくのだと思う。