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ミノとハラミ

もろもろ忘れがちなオタクがのちのち己を振り返るために悪あがきでつけている備忘録

CLUB SLAZY The 4th invitation ~Topaz~ ネタバレ備忘録

舞台

www.clie.asia

本日、大千穐楽おめでとうございます! お疲れ様でした。東京公演を5回ほど観ました。
わたしは2013年の2nd、2014年の3rd、そして今春のLUV SLAZY2(派生ライブ)をそれぞれ1回ずつ観た程度のライトなSLAZYファンなのですが、4thがすごかったので、いまさらながら書き残しておきたい。こっちで書いたけど2015年のベストです。
harami.hatenablog.com


都会の片隅にひっそりと佇むメンズキャバレー、「Club SLAZY」。来店を許可する招待状「ガーネットカード」を受け取ることができるのは、悩みや哀しみを抱えた女性のみ。店を出る頃には、彼女の重い足跡、深い哀しみとともに、一夜の記憶も消されていく――。
何しろ舞台が(本来の意味の)キャバレーなので、「歌ったり踊ったりのてんこ盛り」*1の作品であり、「美しい男たちがあなたのために歌い踊る、きらびやかなショーステージ」と宣伝される。ともすれば、そのイメージだけが先行しがちで、ちょっともったいない。これは、シリーズ皆勤賞のメインキャスト・米原さんが度々口にしていることでもある。
全くもって間違いではないのだ。ハイクオリティーな楽曲と華やかなパフォーマンスは、それだけでショーとして充分に楽しめる。ランウェイ*2や通路でのファンサービスも抜かりない。一昨年わたしが初めて足を運んだのも、歌とダンスを観てみたい気持ちからだった。様々なタイプのイケメンたちが選ばれし女性客のために歌い踊ってくれるステージを、ジャニオタが嫌うわけがなかろう。
しかし、その素晴らしいショーのパフォーマーはあくまで作中のキャラクターであり、わたしたちはディリーダリーストリート24-7番地に佇む「Club SLAZY」を訪れた女性客である。文字通り「ここはSLAZY」*3なのだ。舞台上の彼らは、最後まで役を脱がない。カーテンコールで、センターに立つトップエースは必ずこう言う。「本日のご来店、誠にありがとうございました」。
ステージで歌い踊る彼らをよく見れば、キャラクター設定の通り、仲の悪い二人はいがみあい、仲の良い二人は楽しげに笑みを交わし、後輩が先輩を盛り立て、先輩が後輩を叱っている。ショーが芝居の筋から独立していない。といって、歌によって筋を進めていくブックミュージカルとは違う。そこがこのシリーズの面白いところだ。

SLAZYは一種のバックステージものだ。美しいパフォーマーたちはみな、欠陥だらけで謎だらけ。そもそも店の仕組みだってよくわからない。意味深長なセリフのオンパレード。シリーズを重ねるごとに明かされる真実もあれば、増していく疑惑もあって、考察好きのオタク心をくすぐる作りになっている。一方で、シリーズ初見でも楽しめる工夫はされている。前述の通りわたしもライトファンだし、同行の友人も過去作は未見だったが今回でドはまりしていた。考察に精を出さなくとも、「はいはいミステリアスミステリアス」程度で流したって罰は当たらない。
全ての登場人物に物語がある。それぞれの物語を理解した上で振り返ると、同じシーン・同じ曲・同じセリフが別のメッセージを放ち始める。それらが舞台演劇にしかできない方法で巧みに表現されている。だから何度でも劇場で観たくなる。4thのこの感じ、個人的には『愛の唄を歌おう』以来の体験でした。
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余談ですが、愛唄が好きな人は多分SLAZY好きだよ……特にジャニオタは……。クラブのパフォーマーがソロステージを許される「Lazy」と見習いである「NewJack」に分かれてるんだけど、要するにデビュー組とJr.だから……。今回の4thなんか、先輩のソロのバックに選ばれる選ばれないとか、相方を蹴落としてデビューするしないとかでJr.のシンメが揉めたり、デビューできずに諦めて辞めていく子もいれば、ジャニーおじいちゃんの気まぐれで急にデビューさせられる子もいたりするんだよ……。


以下ネタバレ込みの4th見どころメモですが、観てない人にはなんのこっちゃだし観た人はそんなん知っとるわだし、公演終了してあとはDVDを待つのみなので誰の役にも立たないんだけど、わたしが忘れたくないので残します。

4thでは、8年前の過去が紐解かれる。中でも衝撃だったのは、メインキャラクターであり、ソロステージを許された選ばれしパフォーマー「Lazy」のうちの二人、BloomとDeepの出自だ。これまでのシリーズで彼らは、「どこから来たのかわからない」とされていた。4作目にして初めて、彼らがクラブの裏方である「Mystic」を務めていたことが明かされる。
この「明かし方」がうまい。Bloomの出自は、現在Mysticのリーダーを務めるQが、彼に向かって「ハチ」と呼びかけることによって、早々に判明する。現在のブルーム(B)キュー(Q)は、8年前のハチ(8)キュー(9)。トップエースと裏方、今では立場の異なる二人だが、かつては相方だったのだ。2ndから登場したQというキャラクターは、「わたしの名前はQから始まるそのままキュー」と、手でアルファベットのQを模して名乗るのがお決まりになっていたのに、8年前の場面では、「9から始まるそのままキュー」と、指で数字の9を形作る。このレトリック! 思えば、ブルームのBとハチの8も、よく似た形をしている。
一方、Deepの出自の見せ方は逆で、過去から現在へと接続する。8年前の回想。突然クラブを訪れ、ここで働かせてほしいと縋りつく兄弟。ハチ(8)とキュー(9)は、兄をパフォーマーの見習いNewJackとして、弟を裏方Mysticの見習いとして雇い入れる。Jr.と名付けられた小さな弟のやんちゃな言動に振り回されながらも、彼を慈しみ育てていくハチ。やがて兄は挫折し店を出て行き、弟は兄に代わってパフォーマーの頂点Lazyを目指す――。そう、Jr.こそが後のDeepだ。
Jr.には子役が充てられていて、過去と現在が交差するシーンでは、幼いJr.と大人になったDeep、二人の役者が揃って登場する。一方で、8とBloomは一人の役者が演じ分ける。このキャスティングが、「Deep=Jr.である事実をBloomは知っているが、Bloom=8である事実をDeepは知らない」ことの演劇的な表現にもなっている。「知っている」Bloomには、現在のDeepの向こうに、かつてのJr.の姿が透けて見える。それが舞台上で再現されるのだ。
BloomとDeepはシリーズを通じて仲が良く、コミカルな二人の掛け合いは笑ってなごめるポイントだった。それが急に、過去作のやりとりまで含めて、違った意味を持って見えてくる。B「初めから気が合ったわけじゃないよ」 D「そう? 僕は初めから合うと思ってたけど」 B「大変だったんだから」。DeepはBloomと初めて会った時から気が合うと感じていたけれど、もっと前、本当に初めて出会った時、不器用な8はやんちゃなJr.を手懐けるのに苦労したのだった。こうなると、1stから歌われているBloomのソロナンバー『あなたは知らない』すら、Deepに向けたメッセージに聞こえてくるからすごい。何も知らないDeep、隣で見守るBloom、そして少し離れたところから全てを見続けてきたQ。Qが2ndから歌ってきた『curtain song』の「そうさ僕はひとりぼっち」という歌詞も、より一層の重みを持って胸に突き刺さる。

あとは新旧NewJackの対応。現在の3番手CoolBeansと、駆け込み兄弟の兄のほう・DooBopは、NewJack時代に親友同士だったが次第に擦れ違い、CoolBeansのLazyデビューをきっかけにDooBopはクラブを去った。7年後、CoolBeansの指導を受けているNewJackコンビは、一人のしあがろうとするFlyとそれが気に入らないGrafが仲違い。かつてCoolBeansとDooBopを指導したクラブの代理支配人・Oddsは、二組のNewJackを重ね合わせ、「昔みたいだ」と呟く。かく言うOddsも、DooBopと同時期に一度は店を逃げ出している*4
歌はうまいが踊りが苦手なCoolBeansとFly。一方、踊りは得意だが歌はいまいちなDooBopとGraf。上昇志向のDooBopとFly、だけど先にデビューしたのはCoolBeansのほうだった。逃げ出したDooBopとOdds、逃げなかったCoolBeans。3世代に渡るキャラクターの対応が、立ち位置で、照明で、歌い踊り繋ぐパートで、板の上に炙り出される。

文章で書くとややこしいけど、劇場で実際に見るとパッとわかるんだよ、全てが。わたし自身、言語、特に書き言葉という伝達手段に頼りがちな頭でっかちだからこそ、なるほどこれが舞台の表現か、という鮮烈な体験だった。
「Dから始まるドン底兄弟」の7年越しの和解を経て、なお残された謎の数々。舞台『CLUB SLAZY』に大団円はない。常に何かしらの引きがあるんだよね(笑)。スタッフ・キャスト・ファンの愛と熱意をたっぷり感じるオリジナル作品。5th、そしてラブスレ3を心から期待しています。

*1:4th劇中のセリフ

*2:4thでは設置されなかった

*3:テーマソングのサビの歌詞

*4:Oddsの逃亡もまた、親友でありライバルでもあった相方・Kingが理由なのだが、そのいきさつは2ndで描かれている